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名作家具と一緒に暮らす喜び

わが家のリビングで。
至福の時をもたらす2脚のワシリーチェアー。
中央にあるガラステーブルは、
アイリーン・グレイがデザインしたサイドテーブル。

1925年にバウハウスの教授であったマルセルブロイヤーが、同僚で画家のワシリー・カンデンスキーのためにデザインしたワシリーチェアをご存じですか。クロムメッキのスチールパイプに牛革を張ったラウンジチェアです。モダンデザインの黎明期を飾る名作椅子です。

私がその椅子を知ったのは、まだ大学で建築を学んでいる頃でした。その美しさと存在感に心を奪われました。その後自邸を建てたと時には、我が家の居間に置くことにしました。それから20年近くが経ちます。相変わらずその存在感は健在です。そのデザインの秀逸さは眺めているだけで気持ちを落ち着け、心地よい気分にしてくれます。座り心地もパイプフレームに張られた皮の反発感(クッションというより、引っ張られた皮が体重を跳ね返そうとする力を感じる)と座の傾斜が何とも心地よく、アルコールを片手にTVやDVDを観たり、音楽を聴きながら座っていると至福の時が過ごせます。でも、時には洗濯物が掛けられてたり、脱いだ衣類の置き場となることも生活の中では、ままあります。それでもその存在感は、我が家の中で光っています。

私のデザインした住まいのインテリアは、シナ合板の壁に木製のフローリングと、ナチュラルな木の素材を使っていますが、その自転車のフレームから発想したというモダンなスチールパイプの椅子は、不思議に違和感はありません。きっと、完成された美しいデザインが持っている力でしょうか。

暮らしを構成する気持ちよさには、いろいろな要素が必要です。光や風という自然の要素はとても大切ですが、畳の「お茶の間」に代わってフローリングの床が大半を占める最近の住まいでは、ダイニングチェアやラウンジチェアは重要なインテリアのアイテムだと思います。そこは、美しいデザインと座り心地の良さが両立した椅子を選択したいものです。そのためには、本やインターネットで椅子のデザインに関する知識を得て、家具選びをすることをお勧めします。以前に、結婚指輪を給料の何カ月分かで買うことが話題になりました。その何分の一かでこれからの二人の人生に、共に使う椅子を購入するのもいいかもしれません。

最初は値段が高いと感じても、長い間使い続けることができる品質とデザインの完成度を考えると納得がいくものです。気に入った美しい名作家具と一緒に暮らす喜びをあなたにもぜひ味わって頂きたいと思います。

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