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沖縄の風土にふさわしい家づくり

2012.04.11 沖縄建設新聞 建設論壇

最近沖縄県内で木造住宅の着工件数が増加しています。
コンクリートの住宅が圧倒的に多い沖縄で、木造住宅の選択肢が多少でも増えるのは良いことだと思います。

沖縄でコンクリート(鉄筋コンクリート)の住宅が増えたのは、台風やシロアリに対する脅威からだと考えられます、そして、コンクリート住宅の増加により木材の流通や熟練した大工さんが減り、ますます木造住宅の着工件数は減りました。

しかし、コンクリートの住宅が普及する中で、コンクリート住宅は暑いよいうデメリットも絶えずついて廻りました。コンクリートという材料は、前回の論壇でも述べたように、熱容量が大きい特性を持っています。それは日射により暖められると蓄熱し、冷めにくいという性質です。その為に遮熱対策を講じていないと、夏場など昼間の日射で暖められた躯体が夜になっても冷めず、室内が暑いということになります。このため、受熱面、特に屋根面と西側壁面の遮熱が必要になり対策を怠ると暑くて住めたものではありません。それは、コンクリートの特性を理解していれば当然の事です。

これに対し木材は、熱伝導率がコンクリートの1/10程度と小さく、断熱性があります。木の温もりを感じるというのは、その特性からきているのでしょう。しかし、材料強度の面ではコンクリートに遠く及びません。木構造としての強度を生み出すには、柱や筋交いの入った壁を適度に設ける等の工夫が要ります。鉄筋コンクリtート造は、木造に比べて比較的大きな空間を造ることが出来ます。それだけ開放的な空間を造り易いということになります。同時に、コンクリートの特性を考えると、断熱や日射を直接受けない工夫等の配慮が必要です。

コンクリートの住宅と木造の住宅を対比的に比較して、どちらが優れているかという話題がよく出ます。コンクリートは暑いから木造が良いとか、木造は台風に弱いからコンクリート造が優れている、という短絡的した結論は、あくまで材料や構造が持つ一般的な特性であり、総合的に優劣がつくものではありません。コンクリートの箱の中のマウスが早死にした実験を引用して、コンクリート造は良くない等の意見には、どうしても違和感があります。より沖縄の風土にふさわしい家づくりの工夫を積み上げなくてはいけないと思います。

沖縄の伝統的赤瓦のの民家は木造です。それは、軒を低く抑え、寄棟の屋根を漆喰で固めた赤瓦で葺き、四周に石垣を巡らせ、フクギの防風林を植えた、複合的な要素の集合で台風に備え、開放的な風通しのよい優れた住まいを成立させました。そこには、長時間強烈に吹き荒れる暴風雨に対して、むき身の木構造だけで自然に向き合うのではなく、幾重にも工夫を凝らした家作りの知恵が結集しているのです。材料の特性を理解し、その欠点を他の方法で上手に補完し合い、成立させることが必要です。今、鉄筋コンクリート造という工法がが広く流通している沖縄だからこそ、コンクリートと木の特性を活かした、安全で快適に住むことのできる「沖縄型の住まい」造りを目指したいものです。

マンション等の集合住宅の計画手法として、スケルトンインフィルという概念があります。スケルトンインフィルとは建物をスケルトン(躯体・構造)とインフィル(内外装。設備)に分けて考える建築の設計手法です。つまり、耐用年数の長い構造体と、その中の間仕切壁や内装、設備を分けて考える事で、構造である躯体を変更せず、また解体することなく内装や設備を自由にやりかえることの出来る計画です。

さて、この概念を戸建の家づくりに応用してはどうでしょう。建物の外側は耐久性のある強いコンクリートで造り、コンクリートには充分に受熱を防ぐ配慮を施します。内部は温かみのある木造で造る。コンクリートと木の長所を取り入れたハイブリッドな住宅です。例えば、2階建ての住宅を建てる場合、コンクリートで2層吹抜けの大きな空間を造ります。その内部に木組みで木造の内部空間を挿入します。外部は台風、地震に耐える耐久性の高い鉄筋コンクリート造で、内部にはきの温もりのある、やさしい木造の住空間が生まれます。木造空間は比較的に作り替えることが容易です。間仕切りや内装を変更して設備を更新すれば、また新しい住宅として生まれ変わります。

こうした丈夫なコンクリートの構造体を保ちながら、内部をライフスタイルや家族構成の時間的変化に追従できるようにすることで、何世代も住み続けることができます。社会的ストックとしての、長寿妙な住まいが出来上がります。木造、鉄筋コンクリート造と構造材料によって工法を決めるのではなく、それぞれの特性を生かし、お互いの材料、工法の利点を生かした沖縄特有の亜熱帯の気候風土に合った「沖縄型の住まい」を普及させたいものです。それが新しいかたちの沖縄の民家となり、南国らしい美しい町並みを創りだせればと思います。

日本建築家協会沖縄支部  支部長 島田 潤

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